『フットサル』というスポーツは1994年に正式に競技化されたスポーツで、『フットサル(Futsal)』という用語は、そのとき作られた造語です。
今では老若男女問わず世界中で人気のスポーツ『フットサル』ですが、意外にそのルーツは知られていません。
そこで今回は、フットサル競技の歴史と語源を解説していきます。
フットサルの起源
フットサルの始まりには2説あります。
1つは南米を中心に発展してきたサロンフットボールという競技で、もう1つはイギリス発祥のインドアサッカーという競技です。
サロンフットボールの歴史

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サロンフットボールとは弾まないボールのことで、最初は町の少し開けた土地に数人が集い弾まないボールを蹴ってサッカーに似た競技を行っていたのがルーツです。
『サロンフットボール(5人制屋内サッカー)』という正式な競技は、1930年にウルグアイのYMCAモンテビデオで正式に考案されました。
また、時を同じくしてブラジルでも同類の競技が考案されていたそうです。
そして数年後、ブラジル・サンパウロでサロンフットボールの最初の統一ルールが制定され、サロンフットボールは南米全域へと広まっていくこととなりました。
余談ですが、1961年には、国際サロンフットボール連盟(FIFUSA *1)が設立されました。(その後、世界フットサル協会(AMF *2)と名称を変えています。)
FIFUSAは1965年~1979年の14年間に渡って南米選手権を開催し、1982年に世界サロンフットボール選手権をサンパウロで開催しました。
*1 Federacion Internacional de Futbol de Salonの略称。別名 International Futsal Federation ともいう。
*2 Asociacion Mundial de Futbol de Salonの略称。別名World Futsal Association ともいう。
インドアサッカーの歴史
フットサルの起源となった競技のもう1つは、サッカー母国のイギリスで発祥して、やがてヨーロッパやアメリカ、オーストラリアなどに広まったのが『インドアサッカー』という競技です。
基本的にインドアサッカーは、普通のサッカーと同じボールを使って、競技は屋内で行い、壁面の跳ね返りも使います。
ですが、細かいルールや名称は国によってまちまちで、例えば、スペインでは『フットボール・サラ』、ドイツでは『ハレン・フースバル』、イタリアでは『カルチェット』、オランダでは『ザール』と呼ばれていました。
これを受けてUEFA(欧州サッカー連盟)はオランダで行われていたインドアサッカーの一種、ザールのルールを元にしてインドアサッカーのルール統一を図りました。
FIFAによるルールの統一
FIFA(国際サッカー連盟)は、こうした屋内制ミニサッカーが世界中に広まるのをみてルールの統一を始めます。
最初はFIFUSAやUEFAの協力を得て、1988年よりルールの策定を始め、翌1989年にはFIFA主催のもとオランダで初のミニサッカーの世界大会を開催し、さらに1992年には第2回目の世界大会を香港で開催しました。
FIFAは1988年初大会以前からルールの統一化を図っていましたが、今の競技規則のほぼ完成形となるルールは1992年の香港大会の教訓を機に、FIFAとFIFUSA監修のもと策定されました。
そして香港大会から2年後、FIFAは競技のネックになっていたあらゆる問題点を改正し、1994年よりルールの統一と、競技名を『Futsal(フットサル)』(意味:5人制の室内制サッカー)と正式に決定しました。
◆おまけ
現在適用されている公式ルールは、2000年に大幅なルール改正が行われ後のルールで、1996年にスペインで開催された、第3回フットサル世界選手権の教訓を生かし、特にフットサルのスピード感を生かす目的の改正が随所に行われました。
フットサルの語源

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フットサル(Futsal)の正式な語源は、『サッカー』を表すスペイン語で「Futbol」、同じくポルトガル語で 「Futebol」と『室内』を表す、スペイン語「sala」やポルトガル語「salao」から作られた造語です。
1994年、FIFAによる正式名称発表以前は、ポルトガル語の「futebol de salao」(意味=室内で行うサッカー)の名称が広く使われており、そこから「fute de salao」→「fute sala」→「fut sal」とだんだん省略されていったのを受けて、FIFAは正式名称を「Futsal」と決定しました。
世界のフットサル
世界のフットサルはとても盛んです。
スペイン・オランダ・ドイツ・イタリア・ロシア・ポルトガル・アルゼンチン・ブラジル・ウズベキスタンなどでフットサルのプロリーグがあり、驚くことにサッカー後進国アメリカでも、インドアサッカーはプロ化されています。
世界的にみると、日本のフットサルは比較的遅れていると言えます。
日本でも正式にプロリーグが発足したのが2007年で、発足当時のランキングはアジア内でも4位というものでした。
日本のフットサル
日本のフットサル連盟(設立当初はミニサッカー連盟)の設立は1977年で、実はかなり歴史があります。
しかも1982年にブラジルで行われた、第1回世界サロンフットボール選手権大会にも日本チームは参加していて、その当時はイタリアに大金星を挙げるなど健闘をします。
しかし、1994年にFIFAのフットサル統一ルールで開催されたはじめての国際大会がイタリアのミラノで開催されたのですが、日本はこの大会で、5戦全敗という結果に終わり、世界との差を痛感します。
そういった背景から、日本でも本格的な運営組織の必要性が高まり、1997年には始めてフットサルチームの登録受付けを開始し、本格的なフットサル普及が開始されました。
また2003年には、日本サッカー協会(JFA)が「キャプテンズ・ミッション(現、プレジデンツ・ミッション)」の1つにフットサル競技の推進を掲げ、サッカーと同じレベルの水準を目指して、個人登録制度がスタートしました。
これにあわせて、フットサルの本場ブラジルからコーチを招聘してイベントを開催するなど、本格的な普及を加速させています。
その取り組みの影響もあって若者を中心に人気を博し、それに伴い競技人口も増え、ようやくレベルアップも図られるようになりました。
さらに数年後には、日本サッカー協会と日本フットサル連盟が、フットサル全国リーグ設立準備委員会(2006年4月設置)の提案を受けて、2007年、地域に根ざしたチームにすることやホームタウン制やホームスタジアムの確保を条件に、フットサルの全国リーグ「Fリーグ」をスタートさせました。
現在Fリーグには、エスポラーダ北海道、ステラミーゴいわて花巻、バラドール浦安、府中アスレティックFC、ペスカドーラ町田、湘南ベルマーレ、名古屋オーシャンズ、シュライカー大阪、デウソン神戸、パサジィ大分の10チームが加盟していて盛り上がりを見せており、また、フットサル日本代表の世界ランキングは10位にまで上がっています。(フットサル世界ランキング2015 参照)
ちなみに1位はスペイン、2位にブラジル、3位イタリアと続き、日本は7位イランに次ぐアジアでは2位の成績です。